日本漢方における
防已と清風藤の錯誤



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防已と清風藤の錯誤

 本来「防已」といえば寒涼性の「漢防已」あるいは「粉防己」(原植物はツヅラフジ科のシマハスノカズラ Stephaniatetrandra S. Moore)が使用されるべきものである。

 しかしながら残念なことに近年、間違ってアリストロキア酸を含有する「広防己(Guangfangji)」(Aristolochia fangchi Y.C. Wu ex L.D. Chow)を使用して腎障害が発生する事故のために、アリストロキア酸を含有しない粉防已や漢防已まで敬遠されたかの感がある。

 ところで問題は日本国内で防已といえば、すべて清風藤が用いられており、アリストロキア酸を含有しない粉防已や漢防已はまったく採用されないことである。
 日本では防已といえばすべて日本薬局方で定めるオオツヅラフジ Sinomenium acutum Rehder et Wilson (Menispermaceae)のつる性の茎及び根茎に限定されている。

 このオオツヅラフジは中医学における清風藤に該当するもので、中医学における防已としては使用されない。それもその筈で、両者は寒熱に違いがある。

 本来の防已は辛寒で苦味の性味で、帰経は膀胱、脾、肺、腎。袪風止痛、通経活絡、利水退腫の効能であり、清風藤は辛温で苦、帰経は肝、脾。袪風除湿、通経活絡、散瘀消腫で、両者は類似点が非常に多いものの、寒熱が異なることに大きな違いがある。

 だから実際問題として、日本でもしばしば繁用される防已黄耆湯を用いる場合、変形性膝関節症において、患部の寒熱の状況によって効能に大きな差が出てくることになる。
 数十年前までは、清風藤を用いた日本の防已黄耆湯がよく奏功する変形性膝関節症にしばしば遭遇したものだが、昨今の温暖化により患部に熱を持つ膝関節症が増えており、明らかに防已黄耆湯証と思われる場合でも、石膏や地竜を加えるなどして清風藤の温性を打ち消す工夫をしなければ 効果を発揮しない事態が頻出するのである。

 願わくば寒涼性の正式な防已である粉防已や漢防已が厳密な検査を経て、日本薬局方に採用され、本当の防已黄耆湯が製造できる体制を整えて欲しいものである。